『『少年』は、その前年(1969年)に放映が始まったテレビ・アニメ『ムーミン』も、なんだかほのぼのとしていてつまらない、とハブテた。
ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られると思ったが、ハブテた。
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(ハブテン少年[その158]の続き)
「いやあ、ちょっといいですかあ!」
まくしたてる上司の声よりも大きな声で、エヴァンジェリスト少年が、いや、エヴァンジェリスト氏が、いやいや、エヴァンジェリスト少年が叫んだ。
「そんなの全然、論理的じゃあないでしょう!」
叫ばれた上司だけではなく、会議室にいる全員が、怯んだ。
「(何故、ボクがこんなことを云わないといけないんだ!)」
エヴァンジェリスト少年は、定年となり、再雇用で会社に残っていた。再雇用満了までも遠くはなかった。最後くらい、穏やかなサラリーマン生活を送りたかった。
「(でも、ボクは抑えられない)」
エヴァンジェリスト少年は、彼が少年でなくなっても、65歳が近くなっても『少年』であった。
「(みんな、ぼくより若いのに、何故、『若く』ないのだろう?)」
しかし………
「バチバチバチバチバチバチ!」
と、1970年の『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の卒業式で、下級生たちに拍手で送られながら、体育館を出て行く時、エヴァンジェリスト少年は、まだ知らなかった。
「バチバチバチバチバチバチ!」
『大人』とは、大人だけのことではなく、『青春(若さ)』は、若者だけの特権だけではないことをまだ知らないのであった。
「♬ああ、むーなしく、ゆたーかな、オトナーに、なーりたくない♫」
拍手の音は聞こえず、エヴァンジェリスト少年の耳にだけは、森山良子の歌声(『山本直純』作曲・『倉本聰』作詞)が響いていた。
(続く)
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