『少年』は、当時(1967-1969年頃)、人気となっていたグループ・サウンズの一つである『ブルー・コメッツ』唄う『ブルー・シャトウ』という曲の『♫森とんかつ、泉にんにく♩』という替え歌は、自分も歌ったものの、どこが面白いか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その140]の続き)
「カモーン!カモーン!」
と、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の音楽室の入り口前のスペースで、友人で同じブラスバンド部(吹奏楽部)のスキヤキ君を卍固めで締め上げ続ける。
「カモーン、ギブアップ!?」
卍固めを得意技とするアントニオ猪木が憑依したエヴァンジェリスト少年は、下顎をグーッと長く前に突き出す。
「うっ!」
スキヤキ君は、歯を食いしばる。
「カモーン!カモーン!」
更に捻りあげる。何かに怒っているかのような形相になっている。
「うっ、うっ!」
ジャスティス君は、躰だけではなく、顔も歪む。
「(どうして、当り前のことを云ってはいけなんだ!?)」
自衛隊のことや、民衆が愚かにも崇拝する貧相な老人のことを口にすると、親は猛烈に怒るのだ。平手打ちも飛んできた。
「カモーン!カモーン!カモーン!」
少年は、ハブテていた。『ハブテン少年』は、『ハブテル少年』になっていた。そう、それまで『いい子』であった少年は、不貞腐れたり、腹を立てたりする子になっていた。相手が、親であれ、教師であれ。
「うっ、うっ、うっー!」
しかし、スキヤキ君は、友人の事情なんて知らない。
「(ど、ど、どうしんたんだ?!いつもより強い。締め付け方が強過ぎ....うっー!)」
と、ギブアップ寸前のところで、卍固めの腕の決めも、脚の決めも緩くなった。
「(んん?)」
ただ、背中というか腰に当っている友人の体のある部分だけが、硬直していているように感じられた。
「(『パルファン』子!?)」
エヴァンジェリスト少年は、窓の向こう対面にある本校舎の教室に『妻』の姿を見つけたのだ。
(続く)
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