『少年』は、当時(1960年代)、人気のイギリスのバンド『ザ・ビートルズ』が唄う『ヘーイ!柔道!』と訳の分らない歌が、実は『Hey Jude』という歌であり、『ヘーイ、ジュード』と唄っていることを知り、『柔道』としか聞こえない、とハブテた。
ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られると思ったが、ハブテた。
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(ハブテン少年[その145]の続き)
「お前たち、ちょっと手伝ってくれんか?」
臨海学校の助手を依頼してきた時のようにまた、パンヤ先生が猫撫で声をかけてきた。
「あ?はいい……」
『ハブテル少年』となっていたエヴァンジェリスト少年であったが、事態をよく把握できず、曖昧な返事をした。しかし、ブラスバンドの練習中の音楽室から、パンヤ先生が呼び出したのは、エヴァンジェリスト少年だけではなかった。
「何ですか?」
ジャスティス君とスキヤキ君も音楽室入口前まで出てきていた。
「(いるかなあ?)」
パンヤ先生の呼び出し理由も気になったが、エヴァンジェリスト少年は、音楽室入口前の窓から見える本校舎の教室の方も気になった。
「エヴァ、どうした?」
パンヤ先生は、気もそぞろなエヴァンジェリスト少年の様子に気付き、声を掛けた。
「いえ、なんでもありません」
確かに、なんでもなかった。残念ながら、窓の向こう本校舎の教室には、『パルファン』子さんもあの『肉感的な』少女も、その姿を確認することはできなかったのだ。
「じゃ、ちょっと付いてきてくれ」
とだけ云うと、パンヤ先生は、音楽室横の階段を降りていき、3人の男子生徒は、互いに顔を見あっては、首を捻りながら、付いていった。
「なんじゃろ?」
しかし、パンヤ先生は、振り返ることをせず、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の正門まで行くと、そこに待たせていたタクシーに3人の男子生徒を乗せた。
「え?え?えー?」
なんだか優しい誘拐にあっている感じであった。
(続く)
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