少年』は、その前年(1969年)に放映が始まったテレビ・アニメ『タイガーマスク』は面白くなくはないが、本当のプロレスの方が面白い、とハブテた。
ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られると思ったが、ハブテた。
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(ハブテン少年[その159]の続き)
「(結局、あの後、何も云ってくれなかったわ)」
1970年の『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の卒業式で、下級生たちに拍手で送られながら体育館を出て行く3年生の中に、エヴァンジェリスト少年を見つけた少女は、そう思っていたかもしれない。
「(でも、アタシがいけないのね)」
少女は、自らを責めていたかもしれない。
「(『ボクと付き合ってくれないか?!』って云われた時、アタシは心の中ですぐに返事したの、『はい!』って)」
廃線となった宇品線を超えた旭町の狭隘な道で向き合った情景を思い浮かべていたかもしれない。
「(でも、口では、『….考えます』と云ってしまったんだもの!)」
少女は、唇を噛んでいたように見えたかもしれない。
そして、もう一人の少女は、
「(アタシ、知ってたわ)」
やはりエヴァンジェリスト少年を見つけ、そう思っていたかもしれない。
「(バレーコートの横を通る時、見ていたでしょ、アタシの太ももを)」
と思いながら、あの『肉感的な』少女は、自らの太ももに電気のようなものが走るのを感じたかもしれない。
「(お尻だって、横目で見ていての、知ってるわ)」
と、誰かに見られているかのように、後ろ手でお尻を隠す仕草をしたかもしれない。
「(制服の胸が揺れるのも見ていたでしょ、窓越しに)」
音楽室の出入口前のスペースで、他の男子生徒と何か体を絡めるようなことをしながら、顔だけは、窓の向こうの本校舎の教室の自分を凝視める少年のことを思い出していたかもしれない。
「(ううん、嫌じゃなかったの。もっと、もっと見ていて欲しかったの)」
しかし………
「バチバチバチバチバチバチ!」
という拍手に送られ、体育館を出たエヴァンジェリスト少年の『ミドリチュー』生活は、こうして幕を下ろした。
(続く)
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