『少年』は、当時(1960年代)、人気のイギリスのバンド『ザ・ビートルズ』が唄う『ヤロー・ソコリン』と訳の分らない歌が、実は『イエロー・サブマリン』という歌であり、また、『ヘーイ!柔道!』と訳の分らない歌が、実は『Hey Jude』という歌であるように、ビートルズに限らないが、英語や他の外国語の歌なんて、何を唄っているのか分からない、とハブテた。
ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られると思ったが、ハブテた。
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(ハブテン少年[その146]の続き)
「こっちじゃ」
どうやら東雲(広島市)あたりらしいところでタクシーを降ろされたエヴァンジェリスト少年たち、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の3人の男子生徒は、パンヤ先生に促されて、工場のような、でも工場のようではないような建物の中に入って行った。
「(ここはどこだ?)」
男子生徒たちは、これまでの彼らの人生で入ったことのないような場所に足を踏み入れた。
「ここ、入れ」
パンヤ先生が、3人の男子生徒を招き入れたのは、応接セットの置かれた狭い部屋であった。窓のない、薄暗い部屋で、まさに誘拐されてきたかのようであった。
「なんなんですか?」
『ハブテル少年』となっていたエヴァンジェリスト少年は、臆することなく訊いた。
「まあええけえ、ここでちょっと待っとれ」
しかし、パンヤ先生は、構わず、そう言い残して部屋を出た。
「なんじゃろ?」
「分からん」
「なんか怖いねえ」
エヴァンジェリスト少年は、パンヤ先生が頭に包帯を巻いて学校に来たこと日のことを思い出した。
「お礼参りじゃ」
ハハ・エヴァンジェリストが、朝刊を読んで、そう云った日のことである。
(続く)
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