『少年』は、当時(1960年代)、人気のイギリスのバンド『ザ・ビートルズ』が『ヤロー・ソコリン』と訳の分らない歌を唄っているのを聞いてハブテた。
ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られると思ったが、ハブテた。
************************
(ハブテン少年[その141]の続き)
「(んぐっ!)」
自衛隊は、『パルファン』子さんの前に、どこかに飛んで行った。『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の音楽室の入り口前のスペースで、友人で同じブラスバンド部(吹奏楽部)のスキヤキ君を卍固めを決めたまま、エヴァンジェリスト少年の眼は、窓の向こう対面にある本校舎の教室に釘付けになっている。
「(んぐっ!んぐっ!)」
エヴァンジェリスト少年の体のある部分が更に硬さを増した。窓の向こう対面にある本校舎の教室にいる『パルファン』子さんの横に、あの『肉感的』な少女が姿を見せたのだ。あの貧相な老人も、『肉感的』な少女の前に、どこかに飛んで行った。
「(え!?え!?え!?)」
スキヤキ君は、友人の脚による首へのロックが緩み、顔を斜め上の友人の顔に向けた。
「どしたん?」
「へ?!」
我に返ったエヴァンジェリスト少年は、スキヤキ君をロックする片手と両脚に再び、そして、何かを誤魔化すように、それまで強く力を入れた。
「カモーン!カモーン!カモーン!」
それは、プロレスが超えてはいけない一線を超えた締め付け方であった。
「うっ、うっー!ギブアップ!ギブアップ!ギブアップ!」
スキヤキ君は、堪らずギブアップをし、エヴァンジェリスト少年も卍固めを解いた。
「いてて、いてて…..」
スキヤキ君は、卍固めで決められていた腰の横と、その対角線にある肩、そして首を押さえながら、呻いた。
「うっ、うっ!」
攻撃していた方のエヴァンジェリスト少年も呻いた。両手は股間にあった。
「(危なかったあ。2人同時だと、破裂しそうだ….)」
2人の美少女の前には、自衛隊も、貧相だが崇拝される老人も、ひとたまりもなかった。
『ハブテン少年』であったエヴァンジェリスト少年は、おかしいものはおかしいと主張する『ハブテル少年』となり、『大人』になり始めていたが、同時に彼の股間も『大人』になり始めていたのだ。
「(んぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっー!)」
窓の向こう対面にある本校舎の教室にいる2人の美少女が、こちらを見ていた(ような気がした)。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿