2020年1月10日金曜日

ハブテン少年[その145]




『少年』は、当時(1960年代)、人気のイギリスのバンド『ザ・ビートルズ』が唄う『ヘーイ!柔道!』という訳の分らない歌を唄っているのを聞いてハブテた。

ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られると思ったが、ハブテた。


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「(んぐっ!)」

『石坂洋次郎』原作というよりも、『倉本聰』脚本の『颱風とざくろ』は、エヴァンジェリスト少年の魂を揺さぶったが、同時に、少年の体のある部分も大きく揺さぶった。

「♬なみーきよ、さかーあよ♫」

という『颱風とざくろ』の挿入歌(倉本聰・作詞、山本直純・作曲、森山良子・唄)に、少年の耳は酔い、『大人』への反発を強めながらも、少年の眼は、ブラウン管の映像に、別の『大人』なるものを捉えていた。

「(んぐっ!)」

主演(ヒロイン)は、『石坂洋次郎』ものドラマの常連である松原智恵子である。

「(いいのか、こんな格好をして?)」

あの清楚な女優が、水着姿になっていたのだ。お気に入りの女優がそんな姿をブラウン管に見せていることへの疑問を感じながらも、彼の体のある部分は、素直な『反応』を見せる。

「(んぐっ!)」

しかし、松原智恵子は、それに止まらぬ、これまで見せなかった姿を見せた。

「(んぐっ!んぐっ!)」

松原智恵子は、シャワー姿まで見せたのだ。


「(止めろ!止めろ!止めろ!ボク以外の男にそんな姿を見せなくていい!)」

と、心は叫びながらも、ビデオなどまだなかった当時の少年は、そのシャワー姿を、自身の眼に焼き付けようと瞬きを止めた。

「(んぐっ!んぐっ!んぐっ!)」

しかし、少年は、『己を見る』少年であった。

「(ああ、ボクは……)」

『大人』の穢れを忌み嫌う少年であったが、同時に、自らの『穢れ』を自覚せざるを得ない少年であったのだ。

「(んぐっ!)」

こうして、『倉本聰』は、この年(1969年)から、エヴァンジェリスト少年を、『大人』を拒否する少年に育てながらも、『大人』へと育てていったのだ。


(続く)




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