『少年』は、当時(1967-1969年頃)、人気となっていたグループ・サウンズの一つである『ザ・ワイルドワンズ』のヒット曲『愛するアニタ』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その135]の続き)
「(どうして、こんな変な泳ぎ方をするんだろう)」
エヴァンジェリスト少年は、疑問だった。『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の臨海学校の助手となる3年生の特訓では、バタフライも教えられたが……
「((両手で同時に水をかく意味が意味が判らない)」
そのバタフライでの息つぎは、水泳で息つぎができないエヴァンジェリスト少年には、クロールより難しかった。
「(んぐっ!)」
プールの中からかプールサイドからか、何か、音のような声のようなものが発せられたようであったが、エヴァンジェリスト少年は気が付かない。
「君、型はええのお」
地元広島にある大学で体育の講師をしているというオジイチャン先生は、エヴァンジェリスト少年のバタフライも褒めたが、やはり
「(どうして息つぎせんのんかのお?)」
と思う。背泳ぎも、教えた通りの型を見せたが、
「(背泳ぎは、息できるじゃろうに…)」
エヴァンジェリスト少年は、やはり泳いでいる間、息をしないのだ。
「(上向いていても口を開けると水が入ってくる)」
からである。油断大敵だ。
平泳ぎも、普通の人たちがするような脚を大きく開いて閉めるような泳法ではなく、教えた通り、膝を折って足の裏で水を蹴るような泳法を見事に披露して見せたが、
「(どうして息つぎせんのんかのお?平泳ぎは、普通に息するだけなんじゃが…)」
エヴァンジェリスト少年は、平泳ぎでも、息をしないのだ。
「(水のついた顔を上げた時、口を開けると水が入ってくる)」
からである。これまた、油断大敵だ。
こんな『型』はいいが、息継ぎをしない、いや、息つぎができないエヴァンジェリスト少年のことを、助手となる他の生徒たちは、冷ややかに見ていた。
「(頭はええし、人柄もええし、『アラン・ドロン』みたいな美男子じゃけど、泳ぎはダメじゃのお)」
しかし……
(続く)
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