(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その25]の続き)
「アタシは、星由里子にはなれない…」
ビエール・トンミー氏のことを『若大将のようだ』と云った後、『みさを』は、そう呟いたのだった。
「(あの時、ボクは『みさを』の言葉に意味を理解できなかった。ただの照れとしか思わなかった)」
江ノ島の『エスカー』の第2区間の乗り場を通り過ぎたところにある展望ウッドデッキで、ビエール・トンミー氏は、『みさを』が時折見せる表情の曇りを、その時も見せたことを思い出していた。
「君の方が、星由里子より綺麗だよ」
その時は何も気づかなったビエール・トンミー氏は、歯の浮くようなセリフを吐いた。しかし、それは、『みさを』に対する正直な気持ちであった。
「もー!ビーちゃんったらあ」
『みさを』は、頬を赤らめ、両手でビエール・トンミー氏の右腕を取り、左右に振った。愛らしかった。
「んぐっ!」
その時、股間が『反応』したことを思い出し、ビエール・トンミー氏は、思わず両手を股間に持っていった。
「おい、友人。どうした、おしっこか?」
沈黙したビエール・トンミー氏の所作を見たエヴァンジェリスト氏が、訊いた。
(続く)
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