2020年6月3日水曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その26]






「アタシは、星由里子にはなれない…」

ビエール・トンミー氏のことを『若大将のようだ』と云った後、『みさを』は、そう呟いたのだった。

「(あの時、ボクは『みさを』の言葉に意味を理解できなかった。ただの照れとしか思わなかった)」

江ノ島の『エスカー』の第2区間の乗り場を通り過ぎたところにある展望ウッドデッキで、ビエール・トンミー氏は、『みさを』が時折見せる表情の曇りを、その時も見せたことを思い出していた。

「君の方が、星由里子より綺麗だよ」

その時は何も気づかなったビエール・トンミー氏は、歯の浮くようなセリフを吐いた。しかし、それは、『みさを』に対する正直な気持ちであった。

「もー!ビーちゃんったらあ」

『みさを』は、頬を赤らめ、両手でビエール・トンミー氏の右腕を取り、左右に振った。愛らしかった。




「んぐっ!」

その時、股間が『反応』したことを思い出し、ビエール・トンミー氏は、思わず両手を股間に持っていった。

「おい、友人。どうした、おしっこか?」

沈黙したビエール・トンミー氏の所作を見たエヴァンジェリスト氏が、訊いた。


(続く)



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