2020年6月14日日曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その35]






「なんだか聖火リレーのトーチみたいね」

江ノ島の展望灯台『シーキャンドル』を見た『みさを』は、エヴァンジェリスト氏と同じ感想を持ったのだ。

「(んぐっ!)」

そんな『みさを』を可愛い、と思い出した瞬間、ビエール・トンミー氏は、股間を抑えた。

「おい、行かないのか?」

『シーキャンドル』を見上げたまま沈黙した友人にエヴァンジェリスト氏が、声を掛けた。

「ああ、行くぞ」

自らの『異変』に気付かれぬよう、ビエール・トンミー氏は、再び、友人の前を『シーキャンドル』に向い、歩き始め、『シーキャンドル』の解説を始めた。

「『シーキャンドル』はなあ、グッドデザイン賞も受賞しているんだ。2004年度だったかなあ。『シーキャンドル』が、江ノ島の灯台になったのは、2002年の大晦日なんだ。それまでは、別の灯台だったんだ。落下傘の訓練塔だったんだぞ」
「はあ?落下傘の訓練塔?」




「ああ、二子玉川の、そうだ、『ニコタマ』ではないぞ、そんな省略した云い方は嫌いだ。そう、二子玉川にあった落下傘の訓練塔を江ノ島に移築して、灯台として使っていたんだ」

ビエール・トンミー氏は、観光ガイドのような自身の説明に溺れているようでさえあった。しかし….

「おー、君は、相変らず博識であるなあ。さすが、広島皆実高校始って以来の英才と言われただけのことはあるなあ」

という友人の言葉に、

「うぐっ…」

ビエール.トンミー氏は、また、友人に気付かれないよう、呻いた。


(続く)



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