(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その34]の続き)
「なんだか聖火リレーのトーチみたいね」
江ノ島の展望灯台『シーキャンドル』を見た『みさを』は、エヴァンジェリスト氏と同じ感想を持ったのだ。
「(んぐっ!)」
そんな『みさを』を可愛い、と思い出した瞬間、ビエール・トンミー氏は、股間を抑えた。
「おい、行かないのか?」
『シーキャンドル』を見上げたまま沈黙した友人にエヴァンジェリスト氏が、声を掛けた。
「ああ、行くぞ」
自らの『異変』に気付かれぬよう、ビエール・トンミー氏は、再び、友人の前を『シーキャンドル』に向い、歩き始め、『シーキャンドル』の解説を始めた。
「『シーキャンドル』はなあ、グッドデザイン賞も受賞しているんだ。2004年度だったかなあ。『シーキャンドル』が、江ノ島の灯台になったのは、2002年の大晦日なんだ。それまでは、別の灯台だったんだ。落下傘の訓練塔だったんだぞ」
「はあ?落下傘の訓練塔?」
「ああ、二子玉川の、そうだ、『ニコタマ』ではないぞ、そんな省略した云い方は嫌いだ。そう、二子玉川にあった落下傘の訓練塔を江ノ島に移築して、灯台として使っていたんだ」
ビエール・トンミー氏は、観光ガイドのような自身の説明に溺れているようでさえあった。しかし….
「おー、君は、相変らず博識であるなあ。さすが、広島皆実高校始って以来の英才と言われただけのことはあるなあ」
という友人の言葉に、
「うぐっ…」
ビエール.トンミー氏は、また、友人に気付かれないよう、呻いた。
(続く)
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