2020年6月26日金曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その46]






「ジェームズ・ボンドに似てますね。ウフっ」

ビエール・トンミー氏は、『みさを』と行った江ノ島の『シーキャンドル』の展望デッキで、頼まれて写真を撮ってやった二人連れの若い女性の一人に、そう云われ、赤面したのであった。

「(『ジェームズ・ボンド』って、架空の人物なんだけどなあ)」

とは思うものの、宇部に住んでいた小学生の頃、『琴芝のジェームズ・ボンド』と呼ばれていたので、驚きはしなかった。




「(つまり、ショーン・コネリーに似ているってことなんだろうけど)」

と、その女性の意を汲んでいると、

「仲雅美にも似てるう」

もう一人の若い女性も、ビエール・トンミー氏の顔を覗き込むようにして、当時の人気俳優の名前を口にした。

「そうかなあ」

と、頭を掻いていると、

「痛ーっ!」

ビエール・トンミー氏の臀部に痛みが走った。

「んもー!」

『みさを』に抓られていたのだ。

「あら、彼女、似てるわあ!ねえ?」

ビエール・トンミー氏の背後で拗ねる『みさを』を見た二人連れの若い女性の一人が、連れの女性に同意を求めた。


(続く)


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