(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その43]の続き)
「すみませーん」
女性が声を掛けてきた。江ノ島の『シーキャンドル』の展望デッキである。
「はい?」
ビエール・トンミー氏は、自分の前で両手を下げ、『病人』然として俯いている友人をそのままにし、振り向いた。
「あのお、写真、撮って頂けますか?」
二人連れの若い女性であった。iPhoneを差し出してきていた。
「ええ、いいですよ」
ビエール・トンミー氏は、広島皆実高校時代からの友人のエヴァンジェリスト氏には見せたことのない笑顔で、女性が差し出したiPhoneを受け取った。
「こちらでお願いしまーす!」
女性二人は、鎌倉方面を背にして、展望デッキの手摺の前に並んで立った。
「じゃあ、撮りますよお。はい、チーズ」
ビエール・トンミー氏は、iPhoneの画面フレームに二人の女性を入れた。
「ふふん、『チーズ』だってえ」
「おもしろーい」
と云いながら、女性二人は、ピース・サインを作り、写真に収まった。
「有難うございましたあ」
と、iPhoneを受け取りながら、
「あれ?」
と、ビエール・トンミー氏の顔を覗き込むようにした。
(続く)
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