2020年6月8日月曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その31]






「歳をとると、おしっこが近くなるからな。夜、おしっこで目を覚まさないか?」

江ノ島の『サムエル・コッキング苑』の植物を見ながら歩いていた友人が、突然、股間を押さえたのを見たエヴァンジェリスト氏が、年寄りトークを始めた。

「違う!...まあ、近くなったことは確かだが」

ビエール・トンミー氏は、就寝しても2-3時間で尿意を催し、目を覚ます。

「おお、そうか、そうかあ。昼間でも少しパンツにちびってしまうことはないか?」
「いや、それはない!ボクは、そこまでボケてないぞ。パンツの黄ばみは、おしっこをふるい落とした残りが少し付着しただけだ」

しかし、友人は、その説明を信じていない表情をしていたので、強い口調で続けた。

「だからあ、おしっこは近くなったが、まだ頻尿という程ではないし、お漏らしやチビりなんかまだしてないさ!」

まだ、そこまでの年寄りではない自信があった。尿意を催す頻度は、若い頃より増したことは確かであったが、そのことよりも心配だったのは、尿意を催すのと同じ器官が、別の『意欲』に対しての『反応』が鈍くなってきていることであった。

「(あの頃は、そう、ここを歩いていた時も、『みさを』の髪が風に揺れ、流れてきた香りに、ボクの『アレ』は直ぐに『反応』したものだった…)」

しかし、『今』、『サムエル・コッキング苑』で微風が運んできたのは、エヴァンジェリスト氏の軽い加齢臭であった。




「うげっ!」

思わず、嘔吐いた。


(続く)


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