(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その30]の続き)
「歳をとると、おしっこが近くなるからな。夜、おしっこで目を覚まさないか?」
江ノ島の『サムエル・コッキング苑』の植物を見ながら歩いていた友人が、突然、股間を押さえたのを見たエヴァンジェリスト氏が、年寄りトークを始めた。
「違う!...まあ、近くなったことは確かだが」
ビエール・トンミー氏は、就寝しても2-3時間で尿意を催し、目を覚ます。
「おお、そうか、そうかあ。昼間でも少しパンツにちびってしまうことはないか?」
「いや、それはない!ボクは、そこまでボケてないぞ。パンツの黄ばみは、おしっこをふるい落とした残りが少し付着しただけだ」
しかし、友人は、その説明を信じていない表情をしていたので、強い口調で続けた。
「だからあ、おしっこは近くなったが、まだ頻尿という程ではないし、お漏らしやチビりなんかまだしてないさ!」
まだ、そこまでの年寄りではない自信があった。尿意を催す頻度は、若い頃より増したことは確かであったが、そのことよりも心配だったのは、尿意を催すのと同じ器官が、別の『意欲』に対しての『反応』が鈍くなってきていることであった。
「(あの頃は、そう、ここを歩いていた時も、『みさを』の髪が風に揺れ、流れてきた香りに、ボクの『アレ』は直ぐに『反応』したものだった…)」
しかし、『今』、『サムエル・コッキング苑』で微風が運んできたのは、エヴァンジェリスト氏の軽い加齢臭であった。
「うげっ!」
思わず、嘔吐いた。
(続く)
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