2020年6月11日木曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その34]






「仕事だ。だって…」

江ノ島の『サムエル・コッキング苑を歩いている意識も薄れ、エヴァンジェリスト氏は、口を尖らせる。

「見積を作らないといけないし…」

しかし、ビエール・トンミー氏が、その言葉を遮る。

「いかん、いかん!どうして、家で仕事をするんだ!」
「だってえ…」
「ボクは、家では絶対、仕事はしなかったぞ。まあ、いい。先ずは行くぞ」

と云うと、ビエール・トンミー氏は、歩を速めた。

「……」

沈黙し、己のリーガルのウオーキング・シューズが右、左と出てくるのを見ながら、エヴァンジェリスト氏は、友人に続いた。

「さあ、これだ。これが、『シーキャンドル』だ。どうだ、まさにキャンドルだろう?」

2人の目の前に、下が細く、上に行くに従い太くなっている塔があった。




「おお、なんだか聖火リレーのトーチみたいだなあ」

下ばかり見ていたエヴァンジェリスト氏が、『シーキャンドル』を見上げ、感嘆した。

「うぐっ…」

ビエール.トンミー氏が、友人に気付かれないよう、呻いた。


(続く)



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