(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その33]の続き)
「仕事だ。だって…」
江ノ島の『サムエル・コッキング苑を歩いている意識も薄れ、エヴァンジェリスト氏は、口を尖らせる。
「見積を作らないといけないし…」
しかし、ビエール・トンミー氏が、その言葉を遮る。
「いかん、いかん!どうして、家で仕事をするんだ!」
「だってえ…」
「ボクは、家では絶対、仕事はしなかったぞ。まあ、いい。先ずは行くぞ」
と云うと、ビエール・トンミー氏は、歩を速めた。
「……」
沈黙し、己のリーガルのウオーキング・シューズが右、左と出てくるのを見ながら、エヴァンジェリスト氏は、友人に続いた。
「さあ、これだ。これが、『シーキャンドル』だ。どうだ、まさにキャンドルだろう?」
2人の目の前に、下が細く、上に行くに従い太くなっている塔があった。
「おお、なんだか聖火リレーのトーチみたいだなあ」
下ばかり見ていたエヴァンジェリスト氏が、『シーキャンドル』を見上げ、感嘆した。
「うぐっ…」
ビエール.トンミー氏が、友人に気付かれないよう、呻いた。
(続く)
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