2020年6月16日火曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その37]






「はああ?君はバカか!」

江ノ島の『シーキャンドル』を前にして、エヴァンジェリスト氏が、かつて専務から部長になるよう要請されたのを拒否したことを聞いたビエール・トンミー氏は、過去のこととはいえ、友人の判断に呆れた。

「だが、首のヘルニアがどんどん酷くなり、ついに2003年の1月27日、入院することになったんだ」

エヴァンジェリスト氏は、当時の状況の説明を続けた。

「おお、そうだったのか…」
「3週間入院したんだが、入院して首を吊っている間に、そう、2月1日付で、部長になる人事発令を出されてしまったんだ」




「あの頃は、ボクも50歳になる手前の、仕事が一番忙しい時期で、君と会う余裕もなかった時期だった」

ビエール・トンミー氏は、完全リタイアした今は懐かしいサラリーマン時代に想いを馳せた。

「ああ、あの頃は、君と会うことも殆どなかったな。その頃なのか、この『シーキャンドル』ができたのは」
「ああ、そうだ。ボクは、1999年の3月から2001年の3月まで福岡に転勤していたから、東京に戻って少しして、家内と『シーキャンドル』に来たんだ…んん?」

ビエール・トンミー氏は、その時、得もいえぬ違和感を覚えた。

「君たち夫婦は本当に仲がいいな。どこに行くのも一緒なんだな」
「……ああ、勿論」

徐々に違和感がどこから来るのか分って来ていたが、ビエール・トンミー氏は、友人に話しを合わせた。


(続く)



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