(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その35]の続き)
「ビーちゃんって、本当に『ハクシキ』だね」
ビエール・トンミー氏が、『みさを』に江ノ島の灯台について説明した時、『みさを』もまた『ハクシキ』とビエール・トンミー氏を褒めたのだ。動揺したビエール・トンミー氏の『シーキャンドル』に向かう足が止まった。しかし、
「2002年の大晦日かあ…」
エヴァンジェリスト氏が、ため息を漏らすように言葉を吐き、ビエール・トンミー氏は振返り、友人を見た。
「丁度、その頃だ。ボクは、首のヘルニアになったんだ。正式な病名は、『頚椎間板症』だ」
エヴァンジェリスト氏は、右手を自分の首の右付け根辺りに当てた。
「この辺から、腕、指の先まで痛みがあったんだ。2002年の11月くらいから痛みが出始めて、2003年の年が明けた頃には痛みが常態化していた」
「おお、出張のし過ぎだったんだろ?」
「そうだ。年間200日近く、国内出張をしていて、ノートパソコンを入れ、営業資料もたっぷり入れた鞄をいつも持ち歩いていたんだ」
「どうして、そこまで仕事をするんだ?」
「だって、ボクが仕事を取ってこなかったら誰が仕事を取ってくるんだ?!なのに、専務が、部長になれ、と云ってきたんだ。2003年の1月だった」
「部長になればいいじゃないか。給料上がるだろ?」
「いや、自分で云うのもなんだが、ボクが一番の営業だった。そのボクが部長になると、余り営業に、出張に、出られなくなり、予定する売上が達成できなくなる。その頃から、ウチの会社では、部長は社内で会議、会議に追われるような会社になっていたんだ」
「ああ、社内会議ほど、くだらんものはないからなあ」
「だから、部長になることは拒否した」
(続く)
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