2020年6月25日木曜日

【緊急直撃】疑惑の多目的トイレ



「はあ~、スッキリした」

と、スーパー『サトードーカヨー』の多目的トイレを出て、売り場に戻ろうと、通路の男性用トイレの先の自販機の前まで来た時であった。2020年6月24日のことである。

「中で何をしていたんですか、ビエール・トンミーさん?!」

左手にメモ帳、右手にボールペンを持った男が、いきなり質問と言うよりも突撃をしてきた。メモ帳の表紙には、『週刊ヘンタイ』という文字が見えた。




「え!なんだ、なんだ。君は誰だ?」
「ここの多目的トイレで何をしていたんですか?!」
「君には関係ないだろう!」
「ここ『サトードーカヨー』には、何をしに来たのですか?」
「買い物に決まっているだろうが」
「何を買いに来たんですか?」
「何を買おうと構わんだろう!」
「ほほー、云えないんですね。買い物しに来たのではなく、多目的トイレでイタす為に来たからでしょう」
「馬鹿なこと云うな」
「ベンツに女性を乗せてきたことは分っているんですよ」
「家内だ」
「へええ、わざわざ奥様とここの多目的トイレを使いに来たんですかあ?」
「『サトードーカヨー』では今、『グルメで回ろうニッポン!』をしているんだ。『梅ヶ枝餅』も『マルセイバターサンド』も『スイーツキングさくらんぼ』も売ってるんだ」
「六花亭の『マルセイバターサンド』と佐藤錦の『スイーツキングさくらんぼ』は知ってますが、なんですか『オメエガモチ』って?」
「はああ?君は、『梅ヶ枝餅』(ウメガエモチ)を知らんのか?九州は太宰府の銘菓だ。旨いんだぞお」
「ふふん…しかし、貴方のベンツに乗ってきた女性は、夜のお菓子『うなぎパイミニ』とミート祭の『国産牛サーロイン』も買ってたましたよ」
「家内の後をつけたのか!?」
「貴方に『精』をつけさようということでしょう」
「ワタシはもう歳だ。そんな欲はもうない」
「しかし、貴方のベンツに乗ってきた女性は、貴方より10歳は若い。貴方はなかなか隅に置けない人だ」
「ああ、家内は10歳下だ」
「10歳若い女性と一緒で我慢できなくなって、ここの多目的トイレに駆け込んだんですね?!『はあ~、スッキリした』とも云ったじゃないですか。女性は、まだ中で身繕いをしているんでしょう?」
「はああ?多目的トイレでナニをしたと思っているのか?君は、ヘンタイか?」
「素人グルメ王の貴方は、お笑い界のグルメ王に負けじと、多目的トイレを使うことにしたんでしょう!『多目的』だからアレを目的にしたっていいだろう、という理屈なんでしょうが」
「ワタシは、確かにヘンタイだが、多目的トイレでソンナことはしない。ウンコしただけだ」
「ふん!誰がそんなことを信じるものか!では、確認しますよ」

と云うと、『週刊ヘンタイ』の記者らしき男は、多目的トイレに向った。

「おい!止めろ!止めておくんだ!」

ビエール・トンミー氏は、叫んだ。しかし、『週刊ヘンタイ』の記者らしき男は、多目的トイレのドアを開けた。

「ウウォー!」

記者らしき男が、仰向けに倒れた。

「な、な、なーんなんだあ、この臭いは!?」
「テロだ。テロ、テロ、テロだああ!」

近くにあるトイレから出てきた客や、やはり近くにある文具や書籍、薬品売り場の店員、クリーニング店の店員たちが、叫び、逃げ出した。

「(ボ、ボ、ボクのせいじゃないぞ!ボクは、うんこをしただけだ。止めろ、とも云ったし)」

ビエール・トンミー氏も、他の客や店員に混じって、その場を逃げ出した。

「(ちょっと量は多かった。でも、臭いは、ボク的にはイカシテルんだがなあ)」


(おしまい)


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