(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その55]の続き)
「ううん?欲しいのか?」
エヴァンジェリスト氏が、友人に訊いた。『Eggs'n Things』湘南江の島店で、自分が、『ストロベリー、ホイップクリームとマカダミアナッツ』のパンケーキを注文すると知ったビエール・トンミー氏が『うっ……それにするのか?』と確認してきたのだ。
「ああ、よくあることだ。他人のものは欲しくなるよなあ」
エヴァンジェリスト氏は、したり顔だ。
「いや、違うんだ…」
ビエール・トンミー氏は、顔を左右に振った。
「気持ちはわからんでもない。でもなあ、云っておくが、ボクの女房を欲しがってもダメだぞ」
「馬鹿なことを云うな。確かに君の奥さんは、綺麗だ。歯医者の美人受付嬢だったのをナンパしたんだろ。でもな、ボクには、もっともっと美人な愛する妻がいる」
と云った自分の言葉が、槍となり、己の心に刺さった。
「(うぐっ…いや、『みさを』とのことは、妻に出会う前だったんだ)」
メニューの『ストロベリー、ホイップクリームとマカダミアナッツ』のパンケーキの写真に目を落としていた。
「(だが、エヴァの奴、どうして、『ストロベリー、ホイップクリームとマカダミアナッツ』を選ぶんだ!)」
『ストロベリー、ホイップクリームとマカダミアナッツ』は、『みさを』とこの店に来た時に、彼女が注文したパンケーキだったのだ。その時、自分も、この日と同じ『バナナ、ホイップクリームとマカダミアナッツ』のパンケーキであった。
「(エヴァ、君は、どうしてボクに傷に塩を塗り込むのだ!?)
(続く)
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