2020年7月1日水曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その51]






「パンケーキなんだ」

江ノ島大橋を渡りながら(正確には、江ノ島大橋は、自動車用の橋で、歩行者用の橋なので、それは、江ノ島弁天橋であったが)、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏に、これから行く店について説明を始めた。

「湘南江ノ島店が、日本で3店舗目なんだ。まだ珍しい店だ」

江ノ島弁天橋を渡り終え、更に、境川に懸かる片瀬橋を渡ったところで、ビエール・トンミー氏は、店の名前を友人に教えた。

「『エッグスンシングス』っていうんだ」
「ええ?エッグ…エッグウウ…」
「『エッグスンシングス』だ。まあ、『卵と他の食べ物』っていうような意味だな」
「へええ…
「元々、ハワイの店なんだ」
「君は、ハワイには行ったことがあるのか?」
「ああ、何回かね」
「出張か?
「はあ?仕事でハワイなんか行きやしない。プライベートだ」
「ボクは、海外には、出張でしか行ったことがない。カナダに行ったのも、アメリカやフランス、オランダに行ったのも全部、仕事だ」
「君は、ホント、どこまで行っても、仕事、仕事、仕事だなあ」
「仕事でなければ、海外になんか行きやしない。飛行機なんかに10時間以上も乗ってるのは我慢ならん」
「ハワイは、10時間まではかからんぞ」
「ボクが海外出張していた頃は、飛行機はビジネスクラスだったが、それでも嫌だった。席は狭いし、食事はよく分からない時間に出てくるし、トイレも他の乗客が入っているかもしれないから、いつ行っていいのか分からないじゃないか。ウンコが漏れたらどうなるんだ」




「うっ!」

ビエール・トンミー氏が、思わず呻いた。


(続く)



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