2020年7月19日日曜日

【突撃インタビュー】『石原プロモーション』解散の真相?[その4]






「アナタと若くて特に綺麗な女性の姿が、国立西洋美術館から消えた」

どこのメディアか不明のマスクをした記者らしき男は、駅の改札を出たところで、ビエール・トンミー氏にマイクを突き付けインタビューをしていたが、もはやそれは、インタビューではなく、独白とも云えるものとなっていた。

「そりゃ、『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』を観終えたからだろう」

と、ビエール・トンミー氏は云ったが、マスクをした記者らしき男は、それを聞いてはいない。

「若くて特に綺麗な女性は、西洋美術史のプライベート・レッスンを受けるべく、アナタに付いて行ったら、いきなり『裸体を語るには裸体で』と迫られ、びっくりした」
「まあ、西洋美術史の神髄は裸体画であるからなあ。あ、いやいや、プライベート・レッスンなんかしてないぞ」
「キリスト教世界の西洋画の中には、当然、『昇天』をテーマとした絵画もある。そこで、アナタは、『君も昇天しないと、昇天を理解できない』と『昇天』させたのだ!」
「そうだ、キリスト教の根本は「昇天」だ。遠藤周作はココのところを誤解していなかったから、海外で評価されんかったのだ」
「おお!アナタは、西洋美術だけではなく、文学も語る『名誉教授』なんだ!アナタは更に、映画、主に、洋画も語れるでしょう?」
「ああ、最近、録画し溜めていた映画のアーカイブを整備した」
「USBのハードディスクからブルーレイ.ディスクに一枚一枚焼き、市販のDVDのようなラベルも印刷したのでしょう?」
「おお、よく知っているな。その通りだ」
「アナタのその映画アーカイブに、アカデミー委員会も注目しているという噂ですぞ」
「おお、そうなのか!?」
「アナタは、現代の『淀川長治』と呼ばれるでしょう。来年のアカデミー賞特別賞は確実です。『アーカイブの選定センスと、洗練されたブルーレイラベルの作成が貴重である』ということが受賞理由です」
「見る人たちはちゃんと見ているのだな」
「しかし、アナタは、西洋美術史も文学も極めておられるが、一番の学問的功績はフランス語経済学です」
「そのことを知っていたのか」
「ハンカチ大学商学部のフランス語経済学で『優』をお取りになりましたからね。特に、『エス・エヌ・セー・エフ(SNCF)』にお詳しい」
「そうだ、『エス・エヌ・セー・エフ(SNCF)』には少し五月蝿いぞ」
「アナタは、いつか、日仏合作『SNCF印象派殺人事件』なる映画も製作されるおつもりでしょう」
「ええ、そうなのか?」
「ふん!またまたお惚けを。アナタはその映画構想についても、あの若くて特に綺麗な女性に話し、アナタの教養を見せつけ、『昇天』させたのだ」
「おおーっと危ない、危ない。また、君の策略にハマるところだった。若くて特に綺麗な女性とか、『昇天』とか知らんぞ」
「若くて特に綺麗な女性を『昇天』させただけではなく、アナタ自身も『昇天』した」




「ワシにそんな『元気』はない。もういい、行く」

と、またビエール・トンミー氏は、マスクをした記者らしき男に背を向けた。


(続く)


0 件のコメント:

コメントを投稿