2020年7月14日火曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その64]






「どうだ、用は済ませたか?」

Eggs'n Things』湘南江の島店で、トレイから戻ってきたビエール・トンミー氏に、エヴァンジェリスト氏が遠慮のない訊き方をした。

「な、な、何を云うんだ!?うっ…」

動揺したビエール・トンミー氏は、席に着く際に、テーブルの脚に自らの脚をぶつけてしまった。

「えええ?出なかったのか?」
「違う、違う!そんなもん、出る訳がない」

ビエール・トンミー氏は、勝手に赤面していた。

「ふんん?そんなもん?妙なことを云う奴だなあ。尿意はあるのに、おしっこが出ないっていうのは、年寄りにありがちだが」
「しっ、止めろ!

隣席の二人連れの女性に睨まれていることに気付いたビエール・トンミー氏が、痛めた脚をさすりながら、小声で友人を諌めた。

「おおっ!?ひょっとして、我慢できずに漏らしたのか?大人用オムツはしていなかったのか?ちょっと老いが早過ぎるぞ」




「いい加減にしろ!趣味が悪いぞ」

と云いながらも、バレて困るようなことはしていないが、でもバレていないことに安心したビエール・トンミー氏は、反撃に出る。

「なんだかんだ云ってるが、パンケーキ、全然、減っていないじゃないか!」

エヴァンジェリスト氏が食べていた『ストロベリー、ホイップクリームとマカダミアナッツ』のパンケーキは、パンケーキも、そして、中央に塔のように聳えるホイップ・クリームも、確かに、減っていなかった。


(続く)




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