(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その63]の続き)
「どうだ、用は済ませたか?」
『Eggs'n Things』湘南江の島店で、トレイから戻ってきたビエール・トンミー氏に、エヴァンジェリスト氏が遠慮のない訊き方をした。
「な、な、何を云うんだ!?うっ…」
動揺したビエール・トンミー氏は、席に着く際に、テーブルの脚に自らの脚をぶつけてしまった。
「えええ?出なかったのか?」
「違う、違う!そんなもん、出る訳がない」
ビエール・トンミー氏は、勝手に赤面していた。
「ふんん?そんなもん?妙なことを云う奴だなあ。尿意はあるのに、おしっこが出ないっていうのは、年寄りにありがちだが」
「しっ、止めろ!」
隣席の二人連れの女性に睨まれていることに気付いたビエール・トンミー氏が、痛めた脚をさすりながら、小声で友人を諌めた。
「おおっ!?ひょっとして、我慢できずに漏らしたのか?大人用オムツはしていなかったのか?ちょっと老いが早過ぎるぞ」
「いい加減にしろ!趣味が悪いぞ」
と云いながらも、バレて困るようなことはしていないが、でもバレていないことに安心したビエール・トンミー氏は、反撃に出る。
「なんだかんだ云ってるが、パンケーキ、全然、減っていないじゃないか!」
エヴァンジェリスト氏が食べていた『ストロベリー、ホイップクリームとマカダミアナッツ』のパンケーキは、パンケーキも、そして、中央に塔のように聳えるホイップ・クリームも、確かに、減っていなかった。
(続く)
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