(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その62]の続き)
「おやおや、ヒゲに付いたホイップクリームを『彼女』に取ってもらったんだな?」
エヴァンジェリスト氏は、向かいの席に座るビエール・トンミー氏の顔に近づけた右手を引っ込めながら、北叟笑んだ。ビエール・トンミー氏は、『Eggs'n Things』湘南江の島店で『バナナ、ホイップクリームとマカダミアナッツ』のパンケーキを食べる際に、ヒゲにホイップクリームを付けていたのだ。
「ボクが、君のヒゲのホイップクリームを取ってやるとでも思ったか?」
エヴァンジェリスト氏は、友人の答えを待たず、質問を重ねた。
「安心しろ、いくらボクでも、そんな気持ちの悪いことはせん。ふふん、おしっこではないな」
実際にはテーブルの下で見えなかったが、ビエール・トンミー氏が、パンケーキを食べる手を止めで当てた股間に視線を落とした。
「…む、む。そうだ、おしっこだ。ボクは、おしっこに行ってくる」
と云うと、ビエール・トンミー氏は、フォークを皿に置き、席を立った。
「(図星だ……)」
トイレの個室に入り、ビエール・トンミー氏は、回想した。おしっこなら、個室に入る必要はないが、『自身』を鎮める為には個室が良かった。
「(確かに、この店で、『みさを』は、ボクのヒゲに付いたホイップクリームを取ってくれた)」
江ノ島の『LON CAFE』で『French Toast』を食べた時にも、『みさを』は、向いに座るビエール・トンミー氏の顔に右手を伸ばし、彼の口の端についた生クリームを中指で拭ってくれたが、その時と同じように…
「んぐっ!」
『みさを』は、『Eggs'n Things』湘南江の島店でも、中指でクリームを取り、その指を自らの口に入れ、吸うように舐めたのだ。
(参照:治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その30])
「(あの時も、そうだ、この個室に逃げ込んだ…爆発しそうだった…)」
ビエール・トンミー氏は、個室の中で、ファスナーを下ろした。
(続く)
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