(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その56]の続き)
「ご注文は?」
『Eggs'n Things』湘南江の島店の店員が、2人の老人の席の横に立った。
「..あ、ああ」
我に返ったビエール・トンミー氏が注文を店員に伝え、エヴァンジェリスト氏も続いた。パンケーキの他に、たビエール・トンミー氏は、プランテーションアイスティーを、エヴァンジェリスト氏は、『コナコーヒーブレンド』を注文した。
「おい…」
小声でエヴァンジェリスト氏が、友人に話しかけた。
「ここのコーヒーは、インスタントなのか?」
「はあ?」
「ネスカフェのエクセラか?ゴールドブレンドなのか?」
「何を抜かしてるんだ?」
「メニューに堂々と『コナ(粉)』コーヒーと書くとは、たいした度胸だ」
「君は、ホントに『病人』か?」
「まさか、あっちの方の『コナ(麻薬)』ではあるまいな?」
「おい!店から訴えられるぞ」
「ああ、シェフが、『粉川さん』なのかあ」
「君は、『病人』は『病人」でも、仕事依存症ではなく、別の病気だな」
ビエール・トンミー氏は、『病人』となった友人を気遣い、江ノ島・鎌倉の旅に誘ったことを後悔した。そんなビエール・トンミー氏の心も知らず、
「それにしてもだなあ」
エヴァンジェリスト氏が、店内を見渡しながら、ニヤついた。
「女の子だらけだなあ」
確かに『Eggs'n Things』湘南江の島店の客の大半が、若い女性であった。
(続く)
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