「おい、待てよ」
鎌倉文学館のバラ園を出て行こうとする友人ビエール・トンミー氏を追い、エヴァンジェリスト氏が、声を掛けた。
「どこに行くんだ?次は?」
ビエール・トンミー氏が、振り向き、答えた。
「大仏だ」
「おお、鎌倉の大仏だなあ。そりゃそうだ、鎌倉と云えば、大仏だものなあ」
と、浮かれるエヴァンジェリスト氏を背に、ビエール・トンミー氏は独り、どんどん歩を進め、鎌倉文学館を出て行った。
「おいおい、歩くの速いなあ。半年、君の方が若いからなあ」
と、エヴァンジェリスト氏は、半年歳下の同級生を追った。
「ボクはなあ、大仏にはちょっと五月蝿いん…」
と云う友人を無視し、ビエール・トンミー氏は鎌倉文学館へと上った道を、今度は下って行った。
「ちょっと、たい焼きでも食べていくか?」
『文学館入口』の標識のある交差点まで戻ると、エヴァンジェリスト氏が、『たい焼き なみへい』を見て、提案した。
「時間がない。行くぞ」
と、ビエール・トンミー氏は、『長谷観音前』の交差点方面に戻って行った。
「君は、日本三大仏を知っているか?」
怒ったように道を急ぐ友人に、背中から、エヴァンジェリスト氏が、クイズのような質問を出した。
「はあ?」
と、ビエール・トンミー氏は、面倒臭そうに云いながらも、
「鎌倉の大仏と、奈良の大仏…」
ついつい、友人の質問に乗ってしまった。『博士大先生』の本能的な反応であった。
(続く)
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