「高岡だ」
鎌倉大仏に向かう狭い歩道を歩きながら、エヴァンジェリスト氏の声は自慢げである。
「高岡奏輔ではないぞ」
友人のビエール・トンミー氏に、日本三大仏を問い、奈良の大仏、鎌倉の大仏の他の三番目の大仏を教えるところであった、
「はあ?」
「まあ、芸能界に疎い君は知らんだろうな。宮﨑あおいの元亭主で、俳優だ」
高岡奏輔(2016年当時の芸名)は、その時、まだ芸能界を引退していなかった。
「そいつが大仏と何の関係があるんだ?」
「関係ない。高岡奏輔ではないぞ、と云っただろ。でも、高岡早紀でもないぞ」
「よく知らんが、女優だな。で、要するに『高岡』って何なんだ?」
「富山だ。富山県の高岡市だ」
「ふうん、そんな市があるのか」
「なーんだと、バッカもーん!高岡市は、藤子・F・不二雄の出身地だぞ」
「ほお、それは知らなかったが、そのことを知らなかったからといって、君からバカもん呼ばわりされることはないっ!ボクは、ドラえもん世代ではないからな」
「ふん!キュッ、キュッ、キューッ」
突然、エヴァンジェリスト氏が、ブレーキ音のような声を出した。
「はあ?」
「オ、バッケーのキュー!」
そうだ。それは、ブレーキ音ではなく、歌だった。
「ああ、分った、分った。ボクは、オバQ世代ではある」
エヴァンジェリスト氏の執念に、ビエール・トンミー氏は、降伏した。
(続く)
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