2020年9月21日月曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その122]



治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その121]の続き)



「あっち?」


ビエール・トンミー氏は、並んだ歩く友人のエヴァンジェリスト氏の方に顔を向け、口を開けたままにした。二人は、鎌倉大仏のある高徳院の仁王門を潜り、券売所近くまで来ていた。


「そうだ。あっちだ。君は、『みさを』と京都の大仏を見に行ったのか?」


というエヴァンジェリスト氏の言葉をビエール・トンミー氏は、理解できなかった。


「はああん?京都の大仏?」

「ああ、京の大仏だ」

「京都に大仏なんかあったかなあ?」

「あったさ」

「そんなの見たことないぞ」

「そりゃ、そうだろう。今は大仏自体はもうないからな」

「どういうことだ?」

「その昔、豊臣秀吉が建てたんだそうだが、焼失し、その後、何度か再建されたものの、やはり焼失して今はもうないんだ。でも、君は、『みさを』と正面橋は渡らなかったか?」






「正面橋?」

「ああ、正面通にある橋だ。正面橋、正面通は、京の大仏の正面につながるからそう名付けられたんだ」

「へええ」

「奈良の大仏より大きかった京の大仏は、それ自体はもうないが、大仏殿跡緑地公園に八角形の台座の位置を示す石があるんだぞ」

「そうなんだあ。君は、その跡地を見に行ったのか?」

「いや、行っていない。話に聞いただけだ」

「なーんだ」

「君もどうせ、京都に行ったのは、『みさを』といちゃつくことが目的だったんだろう?」

「いや、『みさを』とは京都には行っていない」

「そうかあ、でも、ここには来たんだな?」



(続く)




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