「(包む!?...んぐっ!)」
鎌倉大仏を前にしながら、ビエール・トンミー氏は、不謹慎にも股間に手を当てた。大仏の『包む』ような優しさを自分は受ける資格がない、という『みさを』の言葉の真の意味を知ることもなく、『包む』という言葉に、ある光景を連想したのだ。
「(包みたい!んぐっ!んぐっ!)」
『みさを』は既に、大仏の背の方に回っていたが、ビエール・トンミー氏は、股間の『異変』に足を踏み出すことができず、まだ、大仏の前にいた。
「(この後、どうするんだ!?夜になる……包みたい!包まれたい!んぐっ!)」
既に、午後4時を過ぎ、日暮れが近付いていた。
「ビーちゃん」
と呼ぶ声に、ショルダー・バッグで股間を隠しながら、大仏の背の方に回った。
「これ、なに?」
とこちらを向いたのは、『みさを』ではなく、エヴァンジェリスト氏であった。
「へ?」
ビエール・トンミー氏は、思わず頭を振った。
「これ、ベロ?」
と、指差された先は、鎌倉大仏の台座の後ろの部分であった。
「ああ、これは…」
と、指差された先から顔を上げ、横にいる友人を見たが、そこにいたのは、『みさを』であった。
「(んぐっ!.....『ベロ』!『みさを』が云ったのか、『ベロ』って!)」
慌てて股間を抑えた。
「べええー。ふふ、おいおい、心配するな、君を舐めたりはしないぞ」
と、舌を出しながら、そこにいたのは、エヴァンジェリスト氏であった。
「ば、ば、馬鹿かあ!」
エヴァンジェリスト氏から身を遠ざけながら、
「(どうなっているんだ?)」
再び、頭を振った。
(続く)
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