「余計な心配だ」
と、ビエール・トンミー氏は、鎌倉大仏に向かう狭い歩道を横に並んで歩くエヴァンジェリスト氏の方を見ることもなかった。回答を必死で考えるあまり、気張りすぎてパンツに『カレー』を付けることのないよう、エヴァンジェリスト氏から、心配されたのだ。
「では、あらためて問う。日本三大仏を云え」
そうだ。鎌倉文学館を出た後、次は鎌倉大仏に向かうと知った時、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏に、『君は、日本三大仏を知っているか?』とクイズにような質問を出したのである。
「うっ…だからあ、鎌倉の大仏とお、奈良の大仏とお…」
と、また気張りそうになった自分に気付き、ビエール・トンミー氏は、
「ふーっ…」
と息を吐いた。
「おお、そうだ、そうだ。緊張をほぐせば、『カレー』漏れは防げるぞ」
「五月蝿い!...あ、そうだ。牛久だ。牛久大仏だ!」
「ほほー、ようやく候補が出たか」
「候補?」
「ところで、どうして牛久が出てきたんだ?『カレー』から『ビーフ・カレー』を連想したのか?」
「いい加減、その『カレー』話、止めないか。それに、候補って、どういうことだ?牛久大仏ではないのか?」
「では訊くが、何故、牛久大仏が日本三大仏の一つなんだ?牛久大仏がそう云っているのか?あ、間違えるな、牛久大仏自身がそう喋っているのか、というのではないぞ。その所有者、管理者がそう云っているのか、と訊いているのだ」
「馬鹿にしているのか?いやまあ、日本三大仏だと自称しているかどうかは知らんが、あれはでかいぞお」
「へええ、デカければ、日本三大仏になれるのか?」
(続く)
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