「回りくどいなあ。君のくどさはよーく知っているが、それにしてもくどいぞ」
ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏に対して、心底呆れている口調でそう云った。ビエール・トンミー氏とエヴァンジェリスト氏とは、鎌倉大仏前まで、というか鎌倉大仏のある高徳院の入口まで来ていた。
「まさか、高岡という所に大仏があるのか?」
興味はなかったが、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏に問うた。
「やっぱり知っていたのか。それなら分るだろうが、高岡大仏には驚かされるよなあ」
「高岡大仏なんて知らないし、興味はない」
「あれは、ただの路地だぞ」
「路地?何を云いたいんだ?」
「出張で少し時間が空いたから、街を歩いてみようと、住宅街のせまーい道を歩いていたんだ。そうしたら、アレがあったからなあ」
「興味はないが、それが、高岡大仏か?」
「焦るな、焦るな」
「いや、焦っているのではない。高岡大仏のことなんかどうでもいいから…」
「『大佛旅館』だ。何故、住宅街に旅館が?と思ったし、何故、『大佛』なんだ、妙なネーミングだなあ、とは思った。君だって、驚いただろ?名前も不思議だと思っただろ?」
「『大佛旅館』なんて知るわけがないだろ」
「隠すな、隠すな。『大佛旅館』に泊ったことあるんだろ?」
「ない!」
「ああそうか、お忍びだったんだな」
「また、何を妄想しているんだ」
「『みさこ』とかって女とで泊ったんだろう?」
「え!?」
(続く)
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