2020年9月17日木曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その118]

 



治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その117の続き)



「回りくどいなあ。君のくどさはよーく知っているが、それにしてもくどいぞ」


ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏に対して、心底呆れている口調でそう云った。ビエール・トンミー氏とエヴァンジェリスト氏とは、鎌倉大仏前まで、というか鎌倉大仏のある高徳院の入口まで来ていた。


「まさか、高岡という所に大仏があるのか?」


興味はなかったが、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏に問うた。


「やっぱり知っていたのか。それなら分るだろうが、高岡大仏には驚かされるよなあ」

「高岡大仏なんて知らないし、興味はない」

「あれは、ただの路地だぞ」

「路地?何を云いたいんだ?」

「出張で少し時間が空いたから、街を歩いてみようと、住宅街のせまーい道を歩いていたんだ。そうしたら、アレがあったからなあ」

「興味はないが、それが、高岡大仏か?」

「焦るな、焦るな」

「いや、焦っているのではない。高岡大仏のことなんかどうでもいいから…」

「『大佛旅館』だ。何故、住宅街に旅館が?と思ったし、何故、『大佛』なんだ、妙なネーミングだなあ、とは思った。君だって、驚いただろ?名前も不思議だと思っただろ?」

「『大佛旅館』なんて知るわけがないだろ」

「隠すな、隠すな。『大佛旅館』に泊ったことあるんだろ?」

「ない!」

「ああそうか、お忍びだったんだな」

「また、何を妄想しているんだ」

「『みさこ』とかって女とで泊ったんだろう?」

「え!?」





(続く)




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