2020年9月10日木曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その111]






「その時はなあ、『クッサー!』では済まなかったんだ」

と、『長谷観音前』の交差点を曲がりながら、エヴァンジェリスト氏が、悔恨の表情を浮かべた。友人のビエール・トンミー氏が、ダイをパンツにお漏らしするのではないか、という勝手な妄想から、前年(2015年)、自分が大阪高島屋前を歩いている時のことを思い出し、更に、『クッサー!』というギャグで有名だったかつての吉本新喜劇の大スター岡八郎のことを思い出していたのであった。

「『クッサー!』は、まあ、普通、オナラだろ」

とビエール・トンミー氏に同意を求めたが、

「知らん!」

友人はつれなかった。

「でも、あの時はなあ、オナラだけじゃなくなったんだ」

エヴァンジェリスト氏には、難波の大阪高島屋前の歩道をもぞもぞと歩いていた時の感覚が蘇ってきていた。

「最初は、オナラが出そう、と思ったんだ。だがな、オナラすると、なんだか余計なものまで出てきそうな感覚があったのは確かだ」
「おい、そんな話、止めないか」

ビエール・トンミー氏は、他の歩行者の耳を気にしていた。

「まずいと思ったから、ボクは、大阪高島屋に入った。トイレだ。何階のトイレに行ったと思う?」
「知るか!」
「5階だ。どうして、5階まで行ったんだ、と思うだろ?」
「思わん!どうでもいい!」
「紳士服売場が5階だったんだ。だって、婦人服売場をスーツを着た男がうろついていたら変だろ」
「君は、どこにいても変だ」




(続く)




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