2020年9月11日金曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その112]






「エスカレーターを歩いて上り、5階まで急いだんだがなあ…」

『長谷観音前』の交差点を曲がり、鎌倉大仏に向かう狭い歩道を歩きながら、エヴァンジェリスト氏が、眉を八の字にした。

「まあ、5階に着いた時はまだ大丈夫だった….と思う。だけどなあ」

と云いながら、自らの臀部に手を当てた。

「トイレを探して歩いている間にだなあ…うーん、オナラを出した….と、自分では思いたかったんだが」
「もういい、止めろ!」
「ああ、ボクは自分を騙せない。君のことも騙すことはできない」
「ボクのことはどうでもいいだろうが!」
「そうなんだ。ボクは知っていた。それが、オナラではないことをな。だから、トイレを見つけ、個室に入った時には、もう覚悟はできていた」
「そんなの覚悟と云うか」
「ああ、ズボンを下ろし、パンツを下ろし、その中を見た」
「止めろ、止めろ!見たくない、聞きたくない!」
「ボクは、そこにカレーライスを見た。いやいや、ライスはなかったから、カレーだな」




「バカモン!想像したじゃないか!」
「幸い、量は多くはなく、ズボンまでは達していないようだった。が、取り敢えず、トレイに座り、出すものは出した。出し切った。ホッとした」
「ホッとしない!」
「でもな、問題はパンツだ」
「総てが問題だ」
「『カレー』の付いたパンツをどうするかだ。どうしたと思う?君ならどうする?」


(続く)



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