「(ええ、そう。でも、これこそがマーケティングの極意だわ!)」
マーケティング部に所属する『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、ビエール・トンミー氏の所業にマーケティングの極意を見たのだ。
「(市場の創造ね!競合のない状態を創り出すことよ!)」
『逆さクラゲ』の部屋の円形ベッドの上で、猛獣と化したビエール・トンミー氏によって、サッシュ・ブラウスを取られたことを、マダム・トンミーは、入場時のリング衣装を剥ぎ取るプロレスの一環と捉えていたが、更に、その下に着けていた胸に当てていたものまでをも取られるに至り、ファン、観客が想像だにしないことまでやってのけるアントニオ猪木を超えるものをビエール・トンミー氏に見たのだ。
「(市場調査をして顧客のニーズを汲み取るがマーケティングではないわ。お客様って、自分が何が欲しいか知らないものよ。そうよ、顧客に媚びてては、いいモノは提供できないわ!)」
マダム・トンミーは、その時点でもまだ、ビエール・トンミー氏とその時しているものをプロレスと理解しながらも(勿論、それは誤解であったが)、その『プロレス』の中にマーケティングの極意が隠されていると感じ取ったのだ。
「(トンミーさんって、相手が、ええ、私が想像もしなかった、望みもしなかったことを仕掛けてらしたのね!トンミーさんって、システム開発部なのに…あ、でも)」
と、今は会社のシステム開発部のエリート社員であるビエール・トンミー氏が、実は、かのハンカチ大学の商学部出身であることを思い出した。ハンカチ大学には、日本のマーケティング界に聳え立つマサ・オウーノ教授が教鞭をとっていたことを聞いたことがあった。
「(トンミーさん、アナタ、コンピューターにも詳しくて、でも、マーケティングの真髄もご存じなのね!)」
しかし、マダム・トンミーは、知らなかった。ビエール・トンミー氏が、マサ・オウーノ教授が教鞭をとっていた教室の隣の教室で学んだことがあるだけであることを。
「(ええ、私、想像もしなかった、望みもしなかったことを仕掛けられて……でも、嬉しい!...というか….)
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿