「君ってえ……ふう…」
ビエール・トンミー氏は、『逆さクラゲ』の部屋の円形ベッドで、『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』と並んで仰向けに寝たまま、息を漏らした。
「ふう…」
マダム・トンミーも、体を横たえたまま、首だけを横に向け、息を漏らした。
「(アラン・ドロン…)」
『戦い』を終え、汗に髪を濡らしたビエール・トンミー氏が、マダム・トンミーには、
「(やっぱり『原宿のアラン・ドロン』だわ。でも…)」
『太陽がいっぱい』でヨットの上で髪を濡らしたアラン・ドロンに見えたのであったが、
「(知ってるわ。この美しい顔の裏に、いえ、美しい顔よりもっと下のところに、怖ろしい『凶器』を隠していることを!そう、『原宿の凶器』!)」
と、マダム・トンミーが、視線を横の男の下半身に眼を落とした時、
「ボクの負けだ…」
男は、マダム・トンミーの方に顔を向け、『獣臭』が消え、代わりに潔さを乗せた香りの口臭の言葉を漏らした。
(続く)
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