「(円形ベッド!...)」
ようやく眼を全開させた『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、『今』自分が寝ているベッドが、円形であることを知った。
「(そう、『チョチョシビリ』!)」
ビエール・トンミー氏によって連れ込まれた『逆さクラゲ』の部屋にあったベッドが円形であり、アントニオ猪木が、1989年4月24日、東京ドームで『チョチョシビリ』と異種格闘技戦を行った時のリングが、ロープなしの円形リングであったことから、その円形ベッドの上で、ビエール・トンミー氏を『チョチョシビリ』の得意技『裏投げ』で打ち負かそうと考えたことを思い出した。
「(でも…窒息しそうだった…)」
『裏投げ』でなければ、『裏投げ』に似たルー・テーズ流の『バックドロップ』でもいい、と考えている隙に、ビエール・トンミー氏から窒息技をかけられたことを思い出した。自らの口が、ビエール・トンミー氏の口で塞がれたのだった。
「(『鉄の爪』も!)」
窒息技をかけられたまま、左手で右臀部に対して、右手で左『胸』に対してクロー攻撃を掛けられ、クローを得意とした『鉄の爪』フリッツ・フォン・エリックのことを思い出したが、そのクローは、ただ痛いだけではなく、
「(痛いっていうより…んぐっ!)」
と、全身を走った稲妻のような『異変』に再び襲われ、白眼を剥きかけながら、
「(テーズのフライング`ボディシザース・ドロップの変形…)」
を掛けられたように、ビーエル・トンミー氏に乗っかかられたまま、ベッドの上に倒れ込んだことを思い出した。
「(そう、メリー・ゴーラウンドでもないのに…)」
と、倒れ込んだ円形ベッドの『リング』が、回転し始めたことに今更ながら驚愕し、
「(トンミーさんだったら、何をやっても許されるんだわ!)」
と、前田日明の『猪木だったら、何をやっても許されるのか』という言葉に倣った言葉をあらためて口中で発した。ビエール・トンミー氏に、次々と既成概念を打ち破ってきたアントニオ猪木を見ていたのだ。
(続く)
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