2021年1月13日水曜日

バスローブの男[その72]

 


「(え?ルー・テーズ?)」


ベッドに片肘をつき、シーツからむき出しの両肩を見せた『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、自身の半開きの眼が捉えた仁王立ちする男のことを、最初、伝説の名レスラー『ルー・テーズ』かと思った。


「(違う….猪木さん?)」


『ルー・テーズ』が白いガウンを着た姿(写真)は、見たことがなかったからだ。仁王立ちする男は、白いガウンを着ていたのだ。少なくとも、マダム・トンミーにはそう見えた。そして、アントニオ猪木なら、白いガウンも着ていたはずだったのだ。


「(でも、『闘魂』って書いてない…)」


そうだ、仁王立ちする男の白いガウン(と見えるもの)には、猪木の白いガウンなら書かれているはずの『闘魂』という文字が書かれていなかった。


「(じゃあ、誰?)」


マダム・トンミーは、徐々に眠りから覚醒して来ていた。


「(ここは、どこ?)」


そして、自分が寝ているのが、円形ベッドであることを知った。




「(どうして、ベッドが丸いの?)」


円形ベッドは、そして、円形ベッドがある部屋は、ピンクの照明に満たされていた。


「(ピンクの照明?)」



(続く)



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