「(え?ルー・テーズ?)」
ベッドに片肘をつき、シーツからむき出しの両肩を見せた『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、自身の半開きの眼が捉えた仁王立ちする男のことを、最初、伝説の名レスラー『ルー・テーズ』かと思った。
「(違う….猪木さん?)」
『ルー・テーズ』が白いガウンを着た姿(写真)は、見たことがなかったからだ。仁王立ちする男は、白いガウンを着ていたのだ。少なくとも、マダム・トンミーにはそう見えた。そして、アントニオ猪木なら、白いガウンも着ていたはずだったのだ。
「(でも、『闘魂』って書いてない…)」
そうだ、仁王立ちする男の白いガウン(と見えるもの)には、猪木の白いガウンなら書かれているはずの『闘魂』という文字が書かれていなかった。
「(じゃあ、誰?)」
マダム・トンミーは、徐々に眠りから覚醒して来ていた。
「(ここは、どこ?)」
そして、自分が寝ているのが、円形ベッドであることを知った。
「(どうして、ベッドが丸いの?)」
円形ベッドは、そして、円形ベッドがある部屋は、ピンクの照明に満たされていた。
「(ピンクの照明?)」
(続く)
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