2021年1月29日金曜日

バスローブの男[その88]

 


「(『名勝負数え唄』も、今は昔だわ…)」


風呂場から聞こえる洗濯機の音を聞きながら、『マダム・トンミーとなって久しいマダム・トンミー』は、思った。


「(『原宿の凶器』っていう噂は本当だったけど…)」


と、初めて、その『凶器』を眼にした時の、いや…手にした時の衝撃を思い出す。


「(最初は、ピストルだと思ったんだわ)」


しかし、ピストルにしては大きずぎると感じ(実際にピストルを触ったことはなかったが)、


「(ロケットのようにも思えたけど)」


それが、彼女の手の中で成長し始めたので、


「(まさかツチノコ?って…)」


と、見たことも、触ったこともない未知の生物かと思っていたところ、




「(あの人ったら、『うおー!うおー!』って、ウフッ)」


と、思い出し笑いに、




「(あらっ!?)」


尿意のような、尿意でないようなものを感じ、マダム・トンミーは、両脚を窄めた。



(続く)



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