「(痛かったわ…)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、見たのだ。彼女が片肘をつき、シーツからむき出しの両肩を見せたままでいる『逆さクラゲ』の部屋の円形ベッドの横に立ったビエール・トンミー氏の胸元だ。
「(まるで針金のようだった…)」
と、『その時』のことを思い出しながら、ビエール・トンミー氏の胸と対峙した自らの胸元に眼を遣った。
「(胸毛も鍛えて『凶器』にするなんて!)」
マダム・トンミーは、前夜のビエール・トンミー氏との『一戦』を、あくまでプロレスと理解している。
「(んんん、違う。あんな剛毛、やっぱり『獣』なんだわ。私、『獣』と…)」
プロレスというよりも、『人間』対『獣』の、もはや異『種』格闘技戦とさえ思えていた。
「(でも、チクチクして、ムフっ!)」
と、頬が緩み、その頬を両手で抱えるようにした時、マダム・トンミーの胸から下を覆っていたシーツが、ハラリと落ちた。
「んぐっ!んぐっ!んぐっ!」
ベッド脇から、猛烈な『反応』音が聞こえてきた。
(続く)
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