2021年1月17日日曜日

バスローブの男[その76]

 


「(でも、まさかナメクジって!)」


『トンミーさんだったら、何をやっても許される』とは思ったものの、『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、ビエール・トンミー氏が、『ナメクジ』までをも繰り出して来たことで、自分が持っていたプロレスの既成概念が完全に打ち砕かれたことを、『逆さクラゲ』の部屋の円形ベッドという他にないプロレスのリングに身を横たえたまま、思い出した。


「(ツンツンしてきたわ…)」


口を口で塞ぐ『窒息技』をかけたまま、左手で右臀部に対して、右手で左『胸』に対してクロー攻撃を掛け、『リング』(実は、円形ベッドに過ぎなかったが)を回転させ莉子とまでしてきたビエール・トンミー氏が、今度は、『窒息技』をかけたまま口の中に『ナメクジ』を侵入させて、彼女の舌をツンツンし、口の中を右へ左へと、上へ下へとヌルヌル動き回らせ、そして、コブラツイストをかけるように絡みつかせてきた時の感覚がまだ舌に残っている。


「(でも、私、負けなかったわ!)」


そうだ、マダム・トンミーは、自らの舌で、彼女の口の中に侵入してきた『ナメクジ』に敢然と立ち向い、そのことで、侵入してきた『ナメクジ』が実は、ビエール・トンミー氏の『舌』であることに気付いたことを思い出した。


「(『ミル・マスカラス』vs『ブラッシー』にもなったけど…)」


『ナメクジ』に次いで、ビエール・トンミー氏の舌が、千の顔を持つ男『ミル・マスカラス』のように『ヒル』に変身し、舌を吸ってきたのに対して、マダム・トンミーも吸血鬼レスラー『フレッド・ブラッシー』のように、ビエール・トンミー氏の舌を強くキューっと吸ったところ、ビエール・トンミー氏が自らの下半身(トランクスの中)に隠していた『凶器』に気付いたが、


「(どうして気付いたのかしら?)」


と、気付いた理由は思い出せない。





(続く)




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