「(アレが『原宿の凶器』だったんだわ!でも、アレって…)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、『今』、自分が身を横たえている『逆さクラゲ』の部屋の円形ベッドのその上で、ビエール・トンミー氏がトランクスの中に隠し持っていることに気付いた『凶器』に思いを馳せた。
「(最初、ピストルだと…でも、ロケットのようにも…)」
確かに、それは最初、『ピストル』のように思えたが、右手でそれに触り、その太さ、形状から『ロケット』であると思ったものの、
「(生きてたあ…)」
そう、彼女が握りしめた右手から溢れていくように成長してきたことから、それが生き物だと悟ったことを思い出した。そして、それを『ツチノコ』と思ったことを。
「(でも、ツチノコじゃなかった!)」
マダム・トンミーは、『今』、その正体を知っているのだ。
「(だって、トンミーさんって、『獣』だった…)」
マダム・トンミーは、『今』自分が『逆さクラゲ』の部屋の円形ベッドの上で、片肘をつき、シーツからむき出しの両肩を見せている状況に至った状況を完全に思い出したのだ。
「(トンミーさんって、臭かったあ!)」
『原宿の凶器』が、実は、何らかの生き物であると感じた時に、プロレスの入場時のリング衣装を剥ぎ取るように、彼女のサッシュ・ブラウスを剥ぎ取り、続いて、胸に当てていたものまでをも剥ぎ取り、まさに『獣』然と、『うおー!うおー!』と叫ぶビエール・トンミー氏から立つ上ってきた『獣臭』が、『今』もマダム・トンミーの鼻先に漂っていた。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿