2021年1月24日日曜日

バスローブの男[その83]



「(え!?また『戦い』?!)」


と思うまもなく、『逆さクラゲ』の部屋の円形ベッドに胸も露わに寝そべる『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』の体の上に、『獣臭』が、物理的な重みをもって覆い被さってきた。


「(フライング・ボディープレスうう!..うっ!)」


攻撃を受けながらも、プロレスを愛するマダム・トンミーは、自身がビエール・トンミー氏から受ける技の名前を心中で発した。


「(痛っ…ああ…)」


胸に、針金のような『凶器』胸毛が刺ささり、マダム・トンミーは半目になった。


「(う、ううー!.....臭ーい!)」


もはや、それは、ビエール・トンミー氏の口臭なのか、『獣臭』なのか分からないが、マダム・トンミーは、その悪臭に病みつきになっていた。


「んぐっ!」


もう何ものにもはばからず、マダム・トンミーは、喉の奥から『その音』を発したが、


んぐっ!んぐっ!んぐっ!うおおおおおおおー!んぐっ!んぐっ!んぐっ!


彼女の『音』を超える、もはや『音』なのか『咆哮』なのか分からぬものをビエール・トンミー氏が発した。マダム・トンミーは、知らなかった。自分もまた『獣臭』を発し、それが、ビエール・トンミー氏を『獣』を超えた『怪獣』と化したことを。




(続く)




0 件のコメント:

コメントを投稿