「ああ、『ハンバーガー』という言葉も、元はやっぱりドイツ語で、勿論、『ハンブルク』から来ているんだ」
と、広島の老舗デパート『福屋』の大食堂で、『少年』の父親が、ハンバーグの名前の由来を問い、更に、『ハンバーガー』の名前の由来についても問うてきた娘(『少年』の妹である)に対して、答えようとしていた。
「ハンブルクで、牛肉と目玉焼きを丸いパンにのせて出した料理があったんだ。それを『ハンブルガー・ルンドシュテュック』っていってね、こう書くんだ」
と、『少年』の父親は、再び、紙ナプキンにモンブランの万年筆で、『Hamburger Rundstück』と書いた。
「これは、『ハンブルグの丸いもの』という意味なんだ。で、これって、『ハンバーガー』みたいな形なのさ。で、『ハンバーガー』が、これに似ているってことで、更に、この『ハンブルガー・ルンドシュテュック』の『ハンブルガー』だけ言葉として残って、ハンバーグを『バンズ』で挟んだ『ハンバーガー』の名前に使われるようになったようんだ。『ハンブルガー』は、英語では『ハンバーガー』となるんだ」
「へええ、そうなんだ。ドイツって、アメリカにも日本にも影響を与えたのね」
「今は、何かというとアメリカ、アメリカ、と云われ、アメリカが凄い国だと思われているけど、ドイツだって凄い国なんだよ。日本と一緒で、この前の戦争で負けたけどね。あ、そういえば、この万年筆だって、元々は、ドイツ製なんだ」
と、手にしていたモンブランの万年筆を娘に差し出した。
と、
「え?お父さん、それって『モンブラン』でしょ?」
と、しばらくハンバーグ定食を黙々と食べていた『少年』が、言葉を発した。
「そうだよ」
「でも、『モンブラン』って、フランス語じゃないの?」
「おお、知っていたのか!」
『少年』の父親は、あらためて自身も息子の聡明さに驚かされ、顔を輝かせた。
……その時、ウエイトレスた2人が、夫々、お盆に乗せた2個ずつコップで、『少年』とその家族の水を取り替えながら、夫々の胸の内で夫々の思いを抱いていた。
「(ええ?『ジェームズ・ボンド』いうたら、フランス語も知っとってんじゃ)」
「(ふぁああ、この匂いじゃったんじゃね!)」
「(万年筆は、フランス語で『モンブラン』いうんじゃろうか?)」
「(ああ、どうしょう……ほんま、クラクラしてきたあ)」
「(『ジェームズ・ボンド』に、フランス語教えてもらいたいわあ)」
「(この『パパ』さんの匂い、ウチのお父さんとはえらい違うわあ。ふぁああ!)」
(続く)
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