2021年12月27日月曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その90]

 


『檀家』は、『檀那(旦那)』と同じもので、『サンスクリット語』を元にして、袈裟やお金をお坊さんに与えることから来た言葉ってことは判ったけど」


と、聡明な『少年』は、まだ疑問点が解消されていないことを忘れず、そう云い始めた。広島の老舗デパート『福屋』本店の南側出口(えびす通り玄関)を出た『少年』とその家族が、帰宅の為、えびす通りをバス停に向い、えびす通りと中央通りとの交差点の横断歩道近くまで来た時、父親は、中央通りの向こう側に聳える百貨店『天満屋広島店』を指差しながら、『天満屋』の歴史を語り出した。そして、『天満屋』の創業の時代、『文政』年間に、『シーボルト』が来日した、と説明し、更に、その『シーボルト』が、オランダ人として日本に入国したものの、実はドイツ人の医者であったこと、更には、日本の女性との間に娘をもうけたことを説明したところ、『少年』が、『シーボルト』は日本で日本の女性と結婚したんだね、と確認してきた為、当時(江戸時代)の結婚というものの説明まで始めることとなり、結婚の際に必要となった書類の説明に関連して、宗教、宗派のことまで語り出し、『檀家』と『門徒』の説明となった。そして、その説明は、更に、『檀家』が『サンスクリット語』に由来すること今で及び、少年はそのことを理解はしたのではあったが…


「どうして、浄土真宗では、『檀家』とは云わないの?」


『檀家』は、『檀那(旦那)』(ダンナ)であり、袈裟やお金をお坊さんに与えること(人)であるという説明では、浄土真宗では、『檀家』という言葉を使わない説明にはなっていなかったのだ。


「浄土真宗では、お布施はないの?」

「浄土真宗だって、お布施はあるさ」

「じゃあ、浄土真宗のお寺には、そこに属する信者はいないの?いや、いたんだよね。『檀家』じゃなくって、『門徒』というんだったね。どうして、『檀家』ではなく『門徒』なの、浄土真宗では?」

「それはな、まさに、『檀家』が意味するものに関係あるんだ」

「『ダーナ』でしょ。『与える』ということでしょ。浄土真宗の『門徒』も『与える』んでしょ、お寺に?」

「問題は、まさにそこなんだよ」

「え?ええ??」


『少年』は、父親の矛盾するとしか思えない説明に、美少年らしからず、口を開けたままにした時、えびす通りと中央通りとの交差点の横断歩道の反対側(『天満屋』側)では、信号待ちする『ノートルダム清心』の制服を着た高校生らしき少女が、


「ウチを作ったんは、お父ちゃんとお母ちゃんよねえ?」


と云って、父親を上目遣いに見た。アトムの育ての親である『お茶の水博士』が、アトムに両親になるロボットを作ってやったということを批判する父親に向け、含みのある云うい方であった。


「おお、そうでえ。それがどしたんや?」




「どうやって作ったん?」

「…..っ….!」



(続く)




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