2022年6月7日火曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その252]

 


「『ボッキ』くんのお兄さんは、凄いんでえ」


ビエール少年の隣席(右隣)の男子生徒、『ハナタバ』少年は、自らの斜め右の席の男子生徒、『ボッキ』くん自慢をビエール少年にしていた。1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室であった。体育館の『思道館』での入学式を終えたばかりである。


「『広大』の医学部なんでえ」

「『ヒロダイ』?....ああ、『広島大学』だね?『広島大学』って、国立大学だったけ?」

「何、云いよるんならあ!『だったけ』?当り前じゃあ。『広大』は、一番の大学じゃないねえ」

「え?」


ビエール少年は、頭の中に、『ハンカチ大学』や『OK牧場大学』の名前を浮かべたが、それを口にするのは控えた。


「お兄ちゃん、現役合格じゃけえ」




『ボッキ』くんにとっても、当然ながら、兄は自慢のようであった。


「『ボッキ』くんは、牛田中学でも一番になるう思うけえ」


『ハナタバ』少年が、そう思うのも無理はなかった。確かに『ボッキ』くんは、『広島大学』の医学部に現役合格した兄に負けず、頭脳明晰であったのである。


しかし、『ハナタバ』少年は、自らの過ちを直に知ることになるのであった。いや、自らが誤った、というよりも、自分の常識を超えた人物がこの世にはいることを知るのであった。


それは、各教科の教師たちの言葉であった。



(続く)




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