「『ボッキ』くんのお兄さんは、凄いんでえ」
ビエール少年の隣席(右隣)の男子生徒、『ハナタバ』少年は、自らの斜め右の席の男子生徒、『ボッキ』くん自慢をビエール少年にしていた。1967年4月、広島市立牛田中学校1年X組の教室であった。体育館の『思道館』での入学式を終えたばかりである。
「『広大』の医学部なんでえ」
「『ヒロダイ』?....ああ、『広島大学』だね?『広島大学』って、国立大学だったけ?」
「何、云いよるんならあ!『だったけ』?当り前じゃあ。『広大』は、一番の大学じゃないねえ」
「え?」
ビエール少年は、頭の中に、『ハンカチ大学』や『OK牧場大学』の名前を浮かべたが、それを口にするのは控えた。
「お兄ちゃん、現役合格じゃけえ」
『ボッキ』くんにとっても、当然ながら、兄は自慢のようであった。
「『ボッキ』くんは、牛田中学でも一番になるう思うけえ」
『ハナタバ』少年が、そう思うのも無理はなかった。確かに『ボッキ』くんは、『広島大学』の医学部に現役合格した兄に負けず、頭脳明晰であったのである。
しかし、『ハナタバ』少年は、自らの過ちを直に知ることになるのであった。いや、自らが誤った、というよりも、自分の常識を超えた人物がこの世にはいることを知るのであった。
それは、各教科の教師たちの言葉であった。
(続く)
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