「来年、2023年の1月からは、『オールナイトニッポン』は、アナタがなさるんですか?」
ビエール・トンミー氏が、自宅を出たところで、スーツ姿の男がいきなり声をかけてきた。というか、斜め背後から身を寄せてきた。どこかのマスコミの記者風であった。
「はああ?なんだ、君は?」
「毎月第2金曜日の『オールナイトニッポン』ですよ」
「何を云っているんだ?」
「『オールナイトニッポン』は、ご存じでしょ?」
「知らなくはないが、『オールナイトニッポン』なんて聞いていたのは、二十歳の頃のことだ。もう50年近く前のことだ。まだ『オールナイトニッポン』ってやっているのか?」
「ほほー、見事なお惚けぶりですなあ」
「惚けてなんかいるもんか!それより君は、なんなんだ?」
「タイトルは、『ビエール・トンミーのオールナイトニッポンGOLDBALL』ですか?」
「『GOLDBALL』?それ、云うなら、『GOLDEN BALL』だろうに。あ、金の球(たま)か?あ、いや、『金玉』か?なんだ、オゲレツな!」
「ふん、シラを切る気ですな。ネタは上がっているんですぞ。『吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』の後番組ですよ?」
「吉田拓郎?」
「吉田拓郎のことをご存じないとは云わせませんぞ」
「そりゃ、知らなくはないが」
「へっ!知らなくはないが、ですって?!先輩後輩の間柄でいらっしゃるではありませんか!」
「な、な、なんのことだ」
「吉田拓郎は、アナタの出身高校『広島皆実(みなみ)高校』の先輩でしょ?」
「そ、そ、そんな『カイジツ高校』なんて、知らん、知らん、知らへんぞ」
「ふふう…取り乱しておいでですね。妙な関西弁になってますよ。iMessageでのやり取りならまだしも、『皆実(みなみ)』の漢字を申し上げていないのに、読み違えてみせるって、『幽霊の正体見たり』な感じですね」
「ワ、ワ、ワテは、広島市立牛田中学を卒業した後、謎の数年間を過ごした後、ハンカチ大学商学部に入ったんや。どこの高校に行ったかは、謎なんや」
「アナタ、『広島皆実高校』が今は、アナタが在籍した頃と異なり、有名大学への進学が激減し、アナタは、そのこと恥じて、『広島皆実高校』出身であることを隠していらっしゃる。確かに、『広島皆実高校』は、昔は、今よりずっと多く、広島大学に進学する生徒がおり、アナタのようにハンカチ大学に進学するもの、アナタの友人のようにOK牧場大学に進学するものもいた」
「ん?エヴァのこと、知ってんのかいな?」
「エヴァンジェリスト氏は、アナタと違い、『広島皆実高校』出身であることを隠してはいらっしゃいません」
「アイツはアイツ、ワテはワテや」
「隠しても、アナタが吉田拓郎の後輩であることは間違いない。それで、吉田拓郎の『オールナイトニッポン』の後を継ぐことになさったのですね?」
「ワテは、吉田拓郎の後輩どうか知らへんが、後輩やとしても、なんでワテが、吉田拓郎の『オールナイトニッポン』の後を継がなあかんねん?」
「吉田拓郎が芸能界を引退するからですよ」
「へええ、せやねんなあ」
(続く)
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