「そうなんですう!モテモテだったんですよ、今も」
エヴァンジェリスト氏に送ってきたビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員からのiMessageには、興奮が漲っていた。
「おいおい、『今も』と云いながら、『だった』とは、妙ではないか。時制は『現在』であるようでいて、実際には『過去形』になってるぞ」
「『今も』と申しますのは、あの方の中学時代と比較しての『現在』であって、今日、この時点のことを申しているのではありません。『現在』と申しましても時間の幅があるのです」
「ちょっと理屈っぽ過ぎるぞ」
「貴方に云われたくはありませんね。いいですか、あの方は、『ナンパ』されたのですう!」
「ああ、だからさっきから云ってるじゃないか。ビエールの奴は、ベンツの船『Arrow460-Granturismo』で『ナンパ』したんだろうに」
「いえ、あの方は、『ナンパ』されたのですう!この場合の『された』は、敬語の『された』ではなく、受動態の『された』なんです!」
「おいおい、戯言もいい加減にしろよ。いい加減は、風呂だけでいいんだ」
「戯言ではありません。あの方は、『ナンパ』されたのですう」
「いいか、『ナンパ』された、受動態としての『ナンパ』された、というのはだな、誰か女に『ナンパ』、つまり、誘われたり、口説かれたりした、ということなんだぞ。まあ、今時だから、女とは限らず、誰か男に『ナンパ』されることもあるだろうがな」
「あの方は、どうしようもない助平ですが、男性には興味はないようです、確かに、あの方は、男の私から見ても惚れ惚れとするお姿でいらっしゃいますので、男性から『ナンパ』されても不思議ではありませんが」
「おおっ?!『ミイラとりがミイラ』か?」
(続く)
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