「クルマの運転免許でなければ、何の運転免許を取られたのですか、あの方は?」
ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、ビエール・トンミー氏が石原プロ入りを噂された頃に『免許』をとったんだな、というエヴァンジェリスト氏に、口をひょっとこのように尖らせ、頭部全体をひねりながら、iMessageでそう質問した。
「何を寝ぼけている。決っているだろ、小型船舶の免許だ。石原プロの若手俳優は皆、小型船舶の免許を持っていたからな。石原プロは、西部警察とかアクションものが多くなっていたから、小林さんが、若手俳優に小型船舶の免許を取るよう、指示でもしたんだろうなあ」
「小林さん?」
「ああ、石原裕次郎のマネージャーで、石原プロの専務だった、『コマサ』こと、小林正彦さんのことだ。小型船舶だけではなく、クルマの大型免許も必要だったと思うぞ」
「大型免許って、云いますと?」
「バスやトラック、ダンプカーにタンクローリーなんかの免許だな」
「何故、小型船舶とか大型自動車とかの免許まで取る必要があったんですか?」
「まあ、アクション系のドラマを売りにしていたからだろうなあ」
「あ!貴方が、石原プロ入りを固辞したのは、小型船舶や大型自動車の免許を取らないといけなかったからではありませんか?貴方は、小型船舶、大型自動車はおろか、普通のクルマの運転免許すらお持ちではない。貴方は、日頃、自分の体の幅以上あるものを操る自信がない、と仰ってきていらしゃいますものね」
「ノーコメントだ。それ以上、訊くなら事務所を通してくれ。ただ、ワシは分ったぞ。ビエールの奴は、石原プロ入りの可能性があった、あの頃に小型船舶の免許を取っていたんだな。それで、その後に、ベンツの船『Arrow460-Granturismo』を買ったんだな」
「ほほー、そうだったんですね」
「何を他人事のように感心しているんだ。要するに、ビエールの奴、やはり船で『難破』ならぬ『ナンパ』したのか?」
「いえ、私はそれは知りません。それは、貴方が仰っているのではありませんか」
「いや、君が云ったんだろうに、ビエールの奴が「ナンパ』した、と」
「いえいえ、私は、あの方が『ナンパ』、という主旨のことは申し上げましたが、あの方が『ナンパ』した、とは申し上げておりません」
(続く)
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