2022年6月13日月曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その1]

 


サウンド『シンセ』が鳴った。


「はあ?なんだ、こんな時間に」


ベッドに半身を起こし、面倒臭そうに返信した。着信音サウンドの『シンセ』は、あの特派員からのiMessgeであり、エヴァンジェリスト氏は、iMessageで返したのだ。


「こんな時間も何も、まだ午後6時になるところではありませんか」

「さっき、孫を2人、娘のところまで送っていったところで疲れているんだ」

「ああ、近所にお住いの娘さんのお子さんですね。まだ、4歳と2歳でいらっしゃる」

「ああ、そうだ」

「娘さんがパートに出る日なんかに、保育所がわりに、よくお孫さんをお預かりになるんですね。迎えに行き、送っても行かれるんですよね」

「そうだ。ウチに来ている間、相手もしなくてはならんのだ」

「クルマを持たないどころか、運転免許も持たない貴方は、お孫さんの送り迎えも、チャイルドシートを付けた自転車でなさるんですよね。でも、リアに、つまり、チャイルドシートは、後部に付けただけなので、一度に乗せられるお孫さんはお一人で、だから、2人を迎えに行くのも2往復、お2人を送って行くのも2往復なんですよね。電動アシスト自転車でもないから、余計に大変なんですよね」




「ワシの自転車のハンドルは、『オールラウンダー』だから、前にチャイルドシートは取り付けできんのだ」

「『オールラウンダー』って、フラットというかストレートのハンドルですね。『アップハンドル』でないとチャイルドシートは付けられませんからね。しかし、幼児を自転車に乗せるのは、20数年ぶりの貴方は、間違って、取り付けが簡単だからと、前方用のチャイルドシートを買ってしまい、あらためて、後方用のチャイルドシートを購入し、取り付けてもらったんですね」

「五月蝿いなあ!そんなことどうでもいいだろう。ワシは、疲れているんだ。ベッドに体を横たえたばかりだったんだぞ」

「しかし、このニュースを知ったら、どんなに疲れていても、貴方は、ベッドから飛び上がられるでしょう」

「いや、この歳になると、少々のことでは驚かん」

「ええ、貴方は、ロシアによるウクライナ侵攻でも驚かれはしなかった。世間の人たちは、21世紀の現代に戦争が起きるとか思っていなかった、と衝撃を受けていますが、貴方は違った」

「ああ、別に驚いてはおらん」

「ええ、貴方は、『20世紀でも21世紀でも、中東やらアフリカやらアフガニスタンやらで戦争はずっとどこかで起きているが、ヨーロッパ、というか白人が多いであろう地域で起きた戦争だからなのか、或いは、報道のされ方もあってなのか、今回のウクライナでの戦争が、自分たちには身近に感じられるのだろう。日本だって、戦争に行く米軍に基地を提供してきているんだから、間接的には戦争をしてきているのに、自分たちにその意識も殆どないし、平成の時代に日本に戦争がなかった、という者がいたり、そう思う人間が多いのには呆れる』とお思いだ」

「君は、どうして、ワシがそう思っている、と勝手に云うのだ」

「あれ、違ってましたか?」

「そんなことより、何のニュースだ?ワシは、兎に角、疲れているんだ。勿体を付けるなら、寝るぞ」

『ナンパ老人』です!」

「はあ?『ナンパ』?『老人』?」

「ほうら、驚いたでしょう!」



(続く)




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