「ああ、アイツのことかあ」
エヴァンジェリスト氏は、『ナンパ老人』に関するニュースだと連絡してきたあの特派員に、iMessageながら呟くように返した。
「君は、アイツを取材対象とする特派員だから、まあ、当り前といえが当り前だな」
「そうです。あの方です」
「ビエールの奴が、若い女に『ナンパ』でも試みて、撃沈したのか」
「『ナンパ老人、危機一髪!』なんです」
「敢えなく撃沈しただけで『危機一髪!』は、大袈裟だなあ。女の連れの男が、その筋の人間で、凄まれでもしたのか?」
「はあ?何か誤解されてませんか?『ナンパ』の相手が、若い女であるのは確かですが」
「20歳台後半か?」
「おお、まさにその通りです!」
「アイツは、昔から若い娘が好きだからなあ。それに、美人だったんだろう?」
「ええ、私も『んぐっ!』するくらいの美人でした」
「おいおい、その『んぐっ!』は、やめておけ。ビエールの奴は、『んぐっ!』が大嫌いだからな」
「どうして、あの方は、『んぐっ!』がお嫌いなんでしょうか?」
「うーむ、それは、よくは分からんが、『んぐっ!』できなくなっているからじゃないかと思う。しかし、その状態で、アイツ、よく『ナンパ』する気になったな」
「はあ?あの方が、『ナンパ』されたのですか?」
「こっちが、『はあ?』だ。20歳台後半の若い美人を『ナンパ』した、と報告してきたのは、君だろうに」
「私、そうは申し上げておりません。あの方が『ナンパ』、という主旨のことは申し上げましたが」
「あの方が『ナンパ』、という主旨のこと、だとかなんとか、その面倒臭い云い方はやめんか。つまり、アイツは、20歳台後半の若い美人を『ナンパ』したのではないのだな?」
「そうです」
「ということは、ははあ~ん、アイツ、20歳台後半の若い美人に見とれて、『難破』してしまったんだな?」
「はあ?はあ?はあ~ん?貴方、馬鹿ですか?」
(続く)
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