「おお、アイツ、ついにベンツと決別か!」
と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛のiMessageで、どこか嬉しげな様子を見せた。
「え?どうして、そうなるんです?」
「BMWにでも乗り換えるのだろう」
「あの方は、BMWのことはお好きではなかったと思いますが」
「確かにな。アイツは云ってたな、『確かにBMWはエエ車や。インパネが運転席の方を向いていて、よく云われとる「走るための車」や。せやけど若いうちはエエで。60歳超えて「走るための車」はないやろ』と」
「でしょう!だから、あの方が、まさかBMWに乗り換える、なんて」
「『キドニーグリル』も醜悪だと云っていたな」
「『キドニーグリル』?ああ、BMWのフロント・グリルのことですね。あれって、『キドニーグリル』っていうんですか」
「『キドニー』は、腎臓のことらしい。左右に二つ並んだフロントグリルが腎臓に似てるからだ、とアイツが云ってたな」
「とても特徴的で、一目でBMWと分ります」
「アイツも、『キドニーグリル』は、BMWのアイデンティティだ、と云っていたぞ。だが、『ちょっと前までの「キドニーグリル」は精悍で格好エエが、その後のはブタ鼻で、デザイナーご乱心か』、とまで云っていたが、3年くらい前からだったか、『巨大化して、ブタ鼻を遥かに超えて、まるでシロナガスクジラとなった』。と嘆いておった」
「ほーら。だから…」
(続く)
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