「おお、君、勘だけではなく、センスもいいな」
と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員をiMessageで珍しく讃えた。
「あんな漢字を知らない奴らのことを『デンデン』(云々)することを止めることを『願ってイません』」
「いいぞ、いいぞ。大事な儀式で(ワシは大事とは思わんが)、『願ってイません』(願って已みません)なんてこと平気で云えるのは、なかなかの『シンゾー』だ」
「私をあんな漢字を知らない奴らと一緒にしないで頂きたい。お尻から入れる薬の『ザヤク』は、『座薬』ではないのですか?」
「おお、確かに、『ザヤク』が『座薬』かどうか、というのは、漢字知らずのあの2人とはレベルが違う問題であった。彼らと比較すると、君には常識というものがないのか、というのは、云い過ぎであった。申し訳なかった。そう、お尻から入れる『ザヤク』は、君の云う『座薬』も間違いではないんだろうと思う」
「『踏襲』を『フシュウ』と読んだり、『頻繁』を『ハンザツ』、『未曾有』を『ミゾウユウ』、ましてや、『云々』を『デンデン』と平気で読んでしまえるくらいだったら、私、国のリーダーになっています!」
「しかし、『ザヤク』は、本来は、『坐薬』なんだろうと思う」
「え?『坐薬』…ですか?『坐』って漢字ありましたか?」
「あるから、こうやって入力変換できているんだろうが」
「『坐』って、『座』の旧字ですか?いや、旧字って、普通、もっとややこしいものだから、略字ですか?」
「いや、『坐』と『座』は、語源的には共通するところはあるものの、本来は別の漢字らしい。『坐』は、『人』が『土』に座ることを意味しているんだそうだ。で、『座』の方は、『坐』に建物を意味する『广』(まだれ)がついて、建物の中で人が座る場所を意味している、と聞いたことがある」
「アナタ、あの方と張り合って、博識系を目指そうとしているんですか?」
「つまりだ、『坐』は動詞というか、座る行為を意味する漢字で、『座』は、名詞というか、座る場所を意味する漢字なんだそうだ。ただ、『坐』は常用漢字ではないから、『坐』と使うべきところで、『座』を使うようになっているらしい。座るようにしながらお尻の穴に入れるから、本来は、『坐薬』なんじゃないかとは思うが、今は、『座薬』でもいいんだろうと思う」
「そんなこと興味ありません!アナタは、オゲレツ系なんだから、方向性を間違えないで頂きたい。要するに…」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿